日々施術を行っていると、胃腸の不調や消化不良を訴える患者さんに頻繁に出会います。先日、中医学の勉強会で取り上げられたテーマが「食滞(しょくたい)」。正式には「食滞胃脘証(しょくたいいかんしょう)」と呼ばれるものです。
この「食滞」とは、食べ過ぎや脂っこい食事、不規則な生活習慣などが原因で、食べ物が消化しきれずに胃腸に停滞している状態のこと。
具体的な症状としては、
などが見られます。
特に鍼灸臨床においては、脾胃(ひい)の働きの低下が背景にあることが多く、東洋医学の観点からは「脾虚(ひきょ)」や「痰湿(たんしつ)」との関連も深いとされます。
食滞への対処法としては、鍼灸治療に加えて、漢方薬や食養生も非常に効果的です。
代表的な漢方薬の一つが「平胃散(へいいさん)」。これは、胃の働きを整え、余分な湿を取り除く作用があります。この処方をベースにした市販薬としては、「タケダ漢方胃腸薬K」などがあります。
また、漢方食材で消化を助けるものには以下のようなものがあります。
上の3つの生薬(山査子・麹・麦芽)を炒って粉末状にしたものが「焦三仙(しょうさんせん)」です。
つい先日、会食でつい食べ過ぎてしまった翌日に、この焦三仙を粉末で服用してみました。服用して30分ほどでお腹が「ぐ~っ」と動き出し、自然に空腹感が戻ってきたのには驚きました。
やはり消化酵素の力、そして漢方の知恵は侮れませんね。ただし、結構酸っぱいです。酸味が苦手な人は要注意。
ちなみにエキス剤タイプをお探しの方にはイスクラ産業の「晶三仙」という商品がありますので、イスクラ提携の漢方薬局で購入されてもいいかと思います。
当院でも、食滞や胃腸の不調に対する鍼灸施術は頻繁に行います。具体的には、
などのツボを中心に、気の巡りを促進し、脾胃の働きを高めるアプローチを行います。
特に「中脘」は胃の機能を整える要穴、「足三里」は健胃の基本中の基本ツボです。「豊隆」は胃経の絡穴で、痰湿を除きながら食滞による不快感をすっきりとさせる効果が期待できます。
食べ過ぎによる胃腸の不調、放っておくと慢性的な不快感や消化器疾患につながることもあります。
そんな時には、漢方(焦三仙)と鍼灸の力を借りることで、自然で無理のない回復が目指せます。
「最近、食べ過ぎが多いかも…」と感じたら、ぜひ一度、鍼灸と漢方で体を整えてみてはいかがでしょうか。