大阪市北区・南森町駅すぐの伝統鍼灸 一滴庵の加堂です。
最近、「特に理由はないのに不安になる」「胸のあたりがざわざわする」「お腹が重くて落ち着かない」といったご相談をよくいただきます。
現代ではストレスや自律神経の乱れなどで説明されることが多いですし、最新の研究でも胃と脳の関係性が示唆されています。
ですが、実は東洋医学ではずっと昔から“メンタルと胃腸は深くつながっている”と考えられてきました。
東洋医学では、胃腸を「脾胃(ひい)」と呼びます。
脾胃は食べ物から気血(エネルギー)を生み出す中心で、全身に栄養を送るだけでなく、心の安定にも関わる臓腑とされています。
そのため、胃腸が弱るとエネルギーが巡らず、体がだるくなったり、気持ちが沈んだりしやすくなります。
逆にストレスやプレッシャーが続くと、胃腸の働きが乱れてお腹の張りや下痢、食欲不振、胃もたれなどが起きることもあります。
つまり、「心が疲れる」と「胃腸も疲れる」し、「胃腸が疲れる」と「心も不安定になる」という関係なのです。
この心と胃腸のつながりは、東洋医学の最古の文献『黄帝内経』にも記されています。
そこでは、胃の経絡に異常があると次のような状態になると書かれています。
「人や明かりを嫌い、ちょっとした物音でもびっくりして慌て、窓を閉め切って一人でひっそりしたり、甚だしいと、高いところに登って歌いたがり、服を脱いで走ろうとする。」
少し極端な表現ですが、これは胃の働きが乱れることで、心の落ち着きや行動のバランスまで影響を受けるという意味です。
胃腸が健康であれば「気」が穏やかに流れますが、滞ったり熱がこもったりすると、心もざわつきやすくなる——古典の時代から、すでにこの関係は知られていたのです。
当院でも気分の不安定さや緊張を感じやすい方に対して、まず胃腸のバランスを整える施術を行うことがあります。
お腹や足のツボを使い、全身の気の巡りを整えることで、結果的に心の落ち着きを取り戻すケースも少なくありません。
実際の施術例ですが、20代の男性の方で、「パニック発作」や「下痢」が続くという主訴で来院されました。
東洋医学的には「胃熱(いねつ)」の傾向があり、胃経のツボである上巨虚(じょうこきょ)を中心に施術しました。。
最初は週2回のペースで続け、5回目あたりからパニック発作の頻度が軽減し、それと共に下痢も徐々に落ち着いてきました。現在では強いストレスがある時にしかパニック発作はでなくなりました。
(※個人の体験であり、すべての方に同様の結果を保証するものではありません。)
不安感や心の不調は、心だけでなく身体の状態とも深く関わっています。
特に胃腸の働きが整うと、エネルギーの流れがスムーズになり、気持ちも安定しやすくなります。
もし最近、
胃腸の調子が乱れている
理由もなく不安を感じる
食欲や睡眠のバランスが崩れている
そんなときは、身体から心を整える視点を取り入れてみるのもおすすめです。
鍼灸はそのサポートができる治療法です。
当院の消化器疾患の考え方はこちらから。