連日鍼灸のことが悪い意味で報道に取り上げられています。
この件に関して鍼灸師の間では「本当に鍼をした結果長胸神経麻痺が出現したのか?」と言う点が疑わしいという見解が多く出ています。
などなど。
では、なぜ医師は「外的要因によるもので、はり治療によって前鋸筋機能障害を引き起こした可能性が考えられる」と言ったのでしょうか。
はい。100%起こりえない場合以外は、医師は可能性はあると答えます。僕も100%ありえないとは言えません。
特に鍼灸治療を見たことのない医師であれば、それこそ藤枝梅安(古い)が使っているような竹串くらいの太さの鍼を想像しているのかもしれません。鍼灸師などは解剖もろくに勉強していないだろうと決めつけて仰られたのかもしれません。
なんにせよ100%鍼が原因だとは言っていないわけです。それがなぜか鍼のせいになってしまっています(涙)。
そうなってくるとなぜトレーナーは真向と反論しないのでしょうか。
僕は万に一つでも可能性があるから反論できないのだと思います。
基本的に医師を含め治療家の多くは真面目な人が多いです。その中で100%ありえないと言い切れないことはやっぱり自分のミスかもしれないという自責の念が出てきてしまうんですね。ましてや勤め人であれば、会社に不利益を起こしてしまったという気持ちも非常に強くなってしまいます。
とりわけ高いエビデンスを持たない鍼灸の場合は正直「何が起こっても不思議ではない」と僕は思っています。
僕も昔、至陽穴(背中の背骨の上のツボ)に横刺(皮膚面の少し下を平行に沿わせて鍼を入れる方法)をした患者さんが次の日「鍼をした後嘔吐が出現した。これは鍼のせいだ!」と怒られたことがあります。
神経支配的にも嘔吐は考えにくいですし、東洋医学的な治療としても便や汗として邪を排出させようという目的で吐かせる目的では使用していませんでしたが、嘔吐の方向性に向かった可能性は否定しきれないことで謝罪したことはあります。(とはいえ、嘔吐してスッキリしたのですから治療としては間違っていなかったはずなんですけど、これをとやかく言っても仕方がありません)
謝罪までいかずとも、患者さんに思わぬトラブルが出た時はやはり自分の治療が正しかったかを考えたり、もっといい方法がなかったかと日々思い悩んだりしてしまいます。
このように基本的な病理と治療に向かう方向性を意識していても、自分の治療が未熟だったからかも……、考えが間違っていたからかも……、まずは患者さんがしんどい思いをしたのだから謝らないと……と思ってしまう治療家は多くいるのだと思います。
とはいえ、今回のケースは話が大きくなりました。
是非とも頑張って声を上げて「どこにどのような鍼をしたか。治療前にどんな検査をしたか」を明確にしてもらいたいものです。
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